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パッチテストとは

 湿疹の原因をつきとめるためのテストです。

 しばしば誤解されていますが、湿疹=皮膚炎はアレルギー性鼻炎・結膜炎(花粉症など)のように血液を調べても原因はわかりません。なぜなら花粉症は血液中のIgE抗体という蛋白質を介したアレルギーですが、湿疹(アトピー性皮膚炎を除く)は血液とは関係のないアレルギーだからです。前者は原因物質が体内に入るとすぐ症状がでて即時型アレルギーと呼ばれ、後者は1日以後に症状がでて遅延型アレルギーとよばれます。なお、皮膚の即時型アレルギーは湿疹・皮膚炎ではなく、じんましんとして現れます。

 顔や首に湿疹が続く場合は、化粧品やヘアケア製品、手や全身に湿疹が続く場合は、日ごろ仕事や趣味でよくさわる物質や金属(たとえば歯の詰め物)に対する遅延型アレルギーの可能性があります。この他、本人が全く予想していない物質が湿疹の原因である場合があります。例えばアトピー性皮膚炎と診断されていたものが、使用中の保湿剤や非ステロイド系外用剤による接触皮膚炎であったり、床ずれと診断されていたものが、消毒による接触皮膚炎であったりします。理屈でわかるものではなく、経験をつんだ皮膚科医の眼が頼りになります。

 このような場合に原因を確定する方法がパッチテストです。原理は簡単で、原因として疑いのある物質(これは、患者の訴えと症状を見て医師が推定します)を、2日間、特殊な小さなシールにつけて腕や背中にはり、その部位に皮膚炎を再現できれば犯人と推定するものです。以下に実例を示します。

化粧品1 化粧品2

 @Aいずれの患者さんも顔の皮膚炎が慢性に続き、アトピー性皮膚炎と診断されていました。複数の化粧品にテスト陽性です 。このような場合、化粧品を変えても同様にかぶれる場合が多く、化粧品に共通して含まれるような成分にアレルギーを生じている場合があります。

化粧品3

 B Aの患者さんではさらに化粧品の成分を入手してパッチテストを行ったところ、増粘剤Xanthan Gum(乳液などにねばりをあたえる添加物)のアレルギー性接触皮膚炎であると判明し、これが入っていない製品に変えることで治癒しました。

薬品1 薬品2 薬品3 薬品4 薬品5

 いずれも慢性で難治性の湿疹でしたが、C消毒剤イソジン、D保湿軟膏アズノール、E市販薬メンソレータムAD、F非ステロイド系軟膏アンダーム、Gアレルギー性結膜炎の点眼薬ザジテン(フサコールも同じ成分を含む)が原因のアレルギー性接触皮膚炎でした。ことにアンダームは主成分の消炎鎮痛剤ブフェキサマックに対して全身性接触皮膚炎(接触皮膚炎症候群)を生じ、塗ったところから全身に拡がる強烈な皮膚炎を誘発することがあります。イソジンはヨード、アズノールは羊毛からとったラノリン油が含まれ、また市販の“しっしん”用の軟膏はメントール、クロタミトン、ジブカインなどの鎮痒・局所麻酔剤が含まれており、これらが皮膚炎の原因になります。即時型アレルギーに対する目薬で遅延型アレルギー(眼瞼の接触皮膚炎)を生ずることは珍しくありません。

ゴム手袋1 ゴム手袋2

 HIゴム手袋もよく手のアレルギー性接触皮膚炎の原因となります。主婦湿疹のために手袋を着用しているうちに発症しますので、手袋をすればするほど悪化する、という悪循環を生じます。ゴム手袋によるかぶれのほとんどは、製造過程で添加される加硫促進剤によるものです(IでTMTDとラベルしている陽性部位は加硫促進剤のひとつチウラムです)。原料のラテックスや薄いゴム手袋の内側にふってあるパウダー(デンプン)がかぶれの原因になるのは極めてまれです。これらが問題になるのは、手袋の着脱のときにラテックスを含んだパウダーを吸い込んで、即時型アレルギーを生じて全身にじんましんやショックを生じる事があるからです。ラテックスアレルギーと呼ばれるのはこのような患者さんですので誤解のないように。

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